Birkhoff
George David Birkhoff (1884-1944) の 1913年の論文 The Reducibility of Maps - George D. Birkhoff を読んでみます。四色定理の証明に関係する重要な論文のようです。
The Reducibility of Maps.
By George D. Birkhoff
Introduction.
球面のような種数0の曲面上の地図(map)は、多くとも5色で、境界を共有する2つの国(region)が同じ色にならないように彩色できることが知られています。* しかし、4色だけで十分かどうかは、知られていません。本論文では、そのような曲面に制限し、4つの色を a, b, c, d とします。
(simply-connected とは位相幾何学の“単連結”のことのようです。multiply-connected は“単連結でない”でよさそうです。)
4色問題の解決に向けて、実質的に次の4つの簡約化(reduction)のすべてがなされます。
もし、3つより多くの境界線が1つの頂点に会するならば、地図の彩色はより国の少ない地図の彩色に簡約される。† そのような頂点で会する、共通の境界線をもつ国のペアを、3つの境界線が1つの頂点で会するようにします。頂点を開くことで、これらの国のうちで共通の境界線をもたない2つの国を連結して、1つ国の少ない地図にします。この簡単になった地図が彩色されれば、開いた頂点を単にもとに戻すだけで、もとの地図の正しい彩色が得られます。
もし、単連結でない(multiply-connected)国があるならば、地図の彩色はより国の少ない地図の彩色に簡約される。 そのような multiply-connected な国の中の平面の分割された領域を削除した部分地図を彩色できますが、その後、すべての部分地図で色の置換によりその国を同じ色にすることができます。部分地図の重ね合わせの効果で、部分地図と同じ色を採用することで、もとの地図の彩色を得ることができます。
(foot-note, p. 115) * リファレンスのセットは Encyklopädie der mathematischen Wissenschaften, III A, B3, pp. 177-178 で見つけることができます。許容される顕著な形の変形についての疑問は、詳細について最近の論文、O. Veblen, Annals of Mathematics, Ser. 2, Vol. XIV (1912), pp. 86-94 を参照してください。
†この記事を通して、境界線(boundary line)または辺(side)という用語を2つの異なる国の共通の連続な線の意味で、また頂点(vertex)という用語を3つまたはそれ以上の異なる国の共通の点という意味で使います。国(region)は、ただ1つ(につながった形状)の境界線または辺を持ちます。
もし、2つまたは3つの境界を接する国が単連結でない(multiply-connected)領域を形成するならば、地図の彩色はより国の少ない地図の彩色に簡約される。 事実、これらの国は、平面を2つまたはもっと多くの部分に分割します。これらの部分を1つの点に縮約し、2つまたは3つの境界を接する国が同じ色になるように色を置換して、部分地図の重ね合わせによりもとの地図の彩色となります。
もし、地図が 1-, 2-, 3- あるは 4-辺国を含むならば、地図の彩色はより国の少ない地図の彩色に簡約される。 もし、 1-, 2- あるいは 3- 辺国があるならば、その国を1つの点に縮め、その1つ国が少なくなった地図を彩色し、それから国をもとに戻し、隣接する国々とは異なる色にします。もし4-辺国があるならば、(その国を囲む4つの国で)反対側にある国をペアにすると、2つのペアができますが、すくなくとも1つは異なる国のペアで、 共通の境界をもちません。その2つの反対側にある国を、その4-辺国と合体させます。もし、その結果できた国の数が2つ少ない地図が彩色できたなら、もとの地図は、4-辺国を挿入し、隣接する国の2つまたは3つの色と異なる色とすることで彩色できます。
上記のタイプの簡約の繰り返しで、曲面全体が1つの国になり、1つの色で彩色されるか、または次の条件の正則地図(regular map)になることは明らかです。(1)すべての頂点は 3枝点です(すなわち3つの国に属します)、(2)すべての国は単連結(simply-connected)です、(3)2つあるいは3つの境界を接する国が単連結でない領域を形成することはありません。(4)すべての国は少なくとも5辺国です。*
本論文の目的は、A. B. Kempe による鎖(chains)の概念の助けによって成立する、進んだいくつかの簡約の存在を示すことです。†
(foot-note, p. 116)* この場合、5色が与えられたなら、5辺国の追加的簡約化が可能です。すなわち、5辺国と境界線を共有する2つの異なる国、ただしその2つの国は境界線を共有しません、を合併させ、その結果2つ国が少なくなった地図を(5色以内で)彩色します。それから、5辺国を戻し、5辺国の境界線にそって隣接している国の4つまたはもっと少ない数の色と異なる色で彩色します。
この簡約化は、5辺国のない正則地図は存在しないゆえに、常に5色での彩色が可能であることを示しています。
f5, f6, .... は正則地図における5辺国、6辺国、… それぞれの個数を表すものとします。オイラーの多面体定理により、
国の数 + 頂点の数 = 辺の数 + 2,
または
f5 + f6 + .... + (1/3)[5f5 + 6f6 + ....] = (1/2)(5f5 + 6f6 + ....) + 2,
これから
f5 = f7 + 2f8 + .... + 12,
それで、正則地図には少なくとも12の5辺国があります。
† Kempe はすべての球面上の地図が4色だけで彩色できることを証明する試みで、この概念を採用しました。AMERICAN JOURNAL OF MATHEMATICS, Vol. II (1879), pp. 193-200 を参照してください。後に P. J. Heawood, Quarterly Journal of Mathematics, Vol. XXIV (1890), pp. 332-338 で過ちが指摘されました。
§1. The Kempe Chaians and Reducibility.
地図 M は4色で彩色されているものとします。 4色から2つのペアを選び(例えば a, bペアと c, dペア) Kempe-Chain について考えます。 a, b chain のようによばれます。a, b chain と c, d chain のように共通の色がないペアを使うことにより、それぞれのchain内で自由に色を入れ替えることができます(Heawood に指摘された Kempe の過ちを避けることができます)。
n (n > 3) 個の国が1つの輪になっている部分を ring R とします。R は M を2つの部分に分けます(つまり、リングの内側と外側です)。それを M1, M2 とします。リングと合わせた部分を M1 + R, M2 + R のように表記します。全体は M = M1 + M2 + R です。
M1 + R において、R の国を含む Kempe-Chain も a, b chain と c, d chain のように complementary なペアを使うことで(Kempe の過ちを避けたうえで)色の入れ替えができます。
R の部分の4色以内の彩色をスキーム(scheme)といいます(R だけを考えると、隣接する国が異なった色になる、彩色の1つです)。あるスキームで M1 + R が彩色できるのなら(M1 + R の彩色で、R の部分がそのスキームになっているのが存在するならば)かつその場合のみ、そのスキームを集合Ⅰに入れることにします。同様に M2 + R に関しては集合Ⅱに入れるものとします。
M において M2 + R を頂点の個数がより多くはないグラフ 𝔐2 に置き換えてみます。ただし、M1 から見るとリングRは同じでなくてはなりません。M1 + 𝔐2 が4色で彩色できれば、集合Ⅰのスキームを増やすことができるかもしれません。同様に M2 + 𝔐1 が4色で彩色できれば集合Ⅱのスキームを増やすことができるかもしれません。
𝔐1 または 𝔐2 のどちらかを、できるだけ小さくしてみます。ただし、集合ⅠとⅡに共通のスキームがないという条件で。Mに n 個の頂点からなるリングRがあるとして、たとえば 𝔐2 として k 個の頂点からなるグラフで置き換えても4色で彩色できない(集合ⅠとⅡに共通のスキームがない)ことが示すことができれば、R の reducing number を φ(n) = k - n とします。(原文がわかりにくいのですが、たぶんこういう意味だと思われます。後の文書とつじつまが合うので)
M が彩色に5色必要なグラフであり、n個の国よりなるリングRがあるものとします。 M = M1 + M2 + R ですが、 M1 と M2 の両方が共に国の数がφ(n)より大きいとします。この場合、M1 か M2 どちらか一方を国の数がφ(n)個のグラフに置き換えることにより、より国の少ない彩色に5色必要なグラフになります。それで、(R が) reducible(可約)という言葉が正当であるこになります。
n = 4, 5 のリングの場合はこうした性質を持ちますが、n = 6 またはそれ以上の場合は定かではありません。それで、M1 に関して R は reducible というようにします。
4色定理の最小反例となるグラフはこのようなリングを含みません。
§2. Rings of Four Regions.
regular map の4国のリングが可約であることと、 reducing number が0であることを一度に証明できます。*
(foot-note, p. 119)* この証明と後の証明で、リングの考察で§1の表記法を使います。特に、R はリングを示し、M1 と M2 は、リングのそれぞれの側にある国の集団を、M は地図 M1 + M2 + R を表します。
α1, α2, α3, α4 の4国が巡回的な順でリングをつくっているものとします (2-1)。M1 + 𝔐2 と M2 + 𝔐1 について考えます。ここで 𝔐2 と 𝔐1 はそれぞれ、M2 と M1 を1つの国に縮めてかつ α1 と α3 につなげたものです (2-2、破線になっている辺は同じ色にしなければならないことを表します。リングの外側に描くべき辺も内側に描いたりします)。
彩色してリングの部分を取り出すと、本質的に可能なのは次の2つです。
a, b, a, b or a, b, a, c
同じスキームを集合ⅠとⅡの両方に入れることはできないので、
a, b, a, b for M1 + R and a, b, a, c for M2 + R
M1 + R | M2 + R |
---|---|
a, b, a, b | a, b, a, c |
とします。2番目の 𝔐1 としてM1 を1つの頂点に縮めてかつ α2 と α4 につなげたものとします (2-3)。
a, b, a, b or a, b, c, b for M2 + R
a, b, a, b はすでに M1 + R の側に入っています。したがって、a, b, c, b を M2 + R に入れるしかありません。
M1 + R | M2 + R |
---|---|
a, b, a, b | a, b, a, c |
a, b, c, b |
M1 + R の側の a, b, a, b ですが、a, d ライン(Kempe-chain)が α1 と α3 をつなげていれば (2-4、2色の辺が Kempe-chain です)、b, c ラインは α2 と α4 をつなげていません。ので、α4 の色を b から c に置換した a, b, a, c を(M1 + R の側に)得ることができます。b, c ラインが α2 と α4 をつなげていれば (2-5)、a, d ラインは α1 と α3 をつなげていませので、α3 の色を a から d に変えた a, b, d, b を(M1 + R の側に)得ることができます。(M1 + R 全体で 色c と d を入れ替えれば、a, b, d, b は a, b, c, b になります。これで、M1 + R と M2 + R の両方に共通のスキームがあることが証明されました。)
したがって、4か国のリングは可約です。reducing nurnber は0です。𝔐1 と 𝔐2 はいかなる場合でも4個以上の頂点を含むことはできません。
§3. Rings of Five Regions.
すべての regular map は5辺国を含みます。* §2(4頂点のリング)のreductions の後は5か国のリングしか持ちません。もし5か国のリングが reducing nurnber 0 で可約ならば、すべての地図は可約で、より小さい地図にすることが可能で、それゆえすべての地図が4彩色可能であることになります。実際のところ、しかしながら、5か国のリングは可約で reducing nurnber 1、φ(5) = 1 で あることが証明できます。
(foot-note, p. 120) * p. 116 の foot-note を参照してください。
はじめに、φ(5)は1を超えられない(0にすることができない)ことを証明します。もし、𝔐1 と 𝔐2 が6より小さいすべての地図を許すなら、M1 + R と M2 + R の可能なスキームがすくなくとも1つの R の共通の彩色を持つことを示す必要があります。
𝔐1 と 𝔐2 (3-2) として、5か国のリング (3-1) とリングの内部の1つの国とします。スキームとして最大3色(内部の国と異なる色)になり、本質的には a が2つの国に使われ、b も2つの国に使われ、c が1つの国に使われます。リングR に c, a, b, a, b が巡回的に並びます。c の色の国を marked region とよびます。それは R の国 α1, α2, α3, α4, α5 のうちの1つです。(5か国のリングを3色で彩色する場合、1つの頂点にしか使われない色の位置を決めてしまえば、本質的に1つの彩色が定まります)
同じ国がマークされたスキームが M1 + R と、M2 + R の両方に現れた場合、置換によって同じスキームになるため(M1 + M2 + R が4色で彩色可能となるため)そのケース(そうした状況になる場合分け)は捨てられます。
すべての場合において、マークされた国が M1 + R の集合Ⅰのスキームと、M2 + R の集合Ⅱのスキームで隣接した国になるか、または同じ国かのどちらかになります。そうではないと仮定します。集合Ⅰのスキームにα1 がマークされたものがあり、集合Ⅱのスキームにα3 がマークされたものがあると仮定しても一般性をそこないません。それで、Ⅰ(c a b a b) [すなわち c, a, b, a, b を α1, α2, α3, α4, α5 に彩色したものを集合Ⅰに] と Ⅱ(a b c a b) [すなわち a, b, c, a, b を α1, α2, α3, α4, α5 に彩色したものを集合Ⅱに] とします。
Ⅰ | Ⅱ |
---|---|
c, a, b, a, b | a, b, c, a, b |
集合Ⅱの a, b, c, a, b ですが、(M2 + R において)α2, α3 の b, c ラインは α5 の b までつながっています (3-3)。そうでなければ、α2, α3 で色b と c を交換することによって、a, c, b, a, b を得ます。これはマークされた国が α2 であり、α1 に隣接しています(仮定に反します)。ゆえに、α2, α3 の b, c ラインは α5 につながっています。そうすると、α4 からの a, d ラインは α1 につながっていません。α4 の a を d に変えた Ⅱ(a b c d b) が得られました。
Ⅰ | Ⅱ |
---|---|
c, a, b, a, b | a, b, c, a, b |
a, b, c, d, b |
2つめの 𝔐2 として、M2 を1つの頂点に縮めて、α2 と α5 につなげて、4つの国にしたものにします (3-4)。これにより、Ⅰ(∗ a ∗ ∗ a) を得ます。∗ は a 以外の色です。後ろの2つの ∗ は b c としてかまいません。次の3つのケースが浮上します。
Ⅰ(b a b c a), Ⅰ(c a b c a), Ⅰ(d a b c a)
最初の b, a, b, c, a はマークされた頂点は α4 であり集合Ⅱにあるスキーム a, b, c, a, b で α3 にマークされているので、隣接頂点にマークがあるので仮定により除外されます。2番目の c, a, b, c, a はマークされた国が α3 であり、集合Ⅱと同じスキームをもつことになるため、除外されます。最後の d, a, b, c, a は本質的には Ⅱ(a b c d b) と同じ(a, b, c, d, b から、aをdに、bをaに、cをbに、dをcに、置換すると d, a, b, c, a になる)であるため矛盾します。よって集合ⅠとⅡは隣接する国がマークされたスキームを持たなくてはなりません。
しかし、もし集合ⅠとⅡが隣接する国がマークされたスキームをもつならば、同じスキームをもちます。
それを証明するために、α1 と α2 がマークされた国であるスキームⅠ(c a b a b) と Ⅱ(b c a b a) をとります。
Ⅰ | Ⅱ |
---|---|
c, a, b, a, b | b, c, a, b, a |
Ⅱ(b c a b a) の b, c ラインについて考えます。α1 と α2 の b, c ラインが α4 までつながっていないならば (3-5)、α1 と α2 の色の置換によって、Ⅱ(c b a b a) を得ますが、α1 がマークされているタイプはすでに集合Ⅰにリストアップされています。それで、b, c ラインは α4 までつながっているものとして、α3 の a を d に変えてⅡ(b c d b a) を得ます。
Ⅰ | Ⅱ |
---|---|
c, a, b, a, b | b, c, a, b, a |
b, c, d, b, a |
𝔐2 として、M2 を1つの頂点に縮めて、α1 と α4 につなげます (3-6)。これにより、Ⅰ(b ∗ ∗ b ∗) を得ます、次の3つのスキームになります。
Ⅰ(b c d b a), Ⅰ(b c d b c), Ⅰ(b c d b d)
最初のスキームはすでに集合Ⅱにあります。3つめのは、マークされた頂点は α2 であり、これも集合Ⅱにあります。したがって、マークされた国が α3 であるⅠ(b c d b c) が残ります。(b, c, d, b, c は a, b, c, a, b に書き換えたほうが分かりやすいと思います。)
Ⅰ | Ⅱ |
---|---|
c, a, b, a, b | b, c, a, b, a |
a, b, c, a, b | b, c, d, b, a |
結果的に、2つのスキームの集合がリングの共通の彩色をもたないならば、ⅠとⅡがそれぞれ α1 がマークされたスキーム、α2 がマークされたスキームをもつならば、Ⅰは α3 がマークされたスキームを持ちます。
この議論を繰り返すことにより、Ⅱの α2 がマークされたスキームとⅠの α3 がマークされたスキームからⅡの α4 がマークされたスキームが導かれます。さらに繰り返して、Ⅰの α5 がマークされたスキームを導くことができます。さらにもう一度繰り返して、Ⅱの α1 がマークされたスキームが導かれます。
したがって、すべての場合において2つの集合には共通のスキームがあり、これはリングが可約であることを示し、reducible number は 1 より下げられません。
reducing number φ(5) が1であることを示すため、2つのスキームの集合が本質的に異なるRの彩色を持つことが要求され、かつそれらのスキームの置換が、同じ集合の別のスキームを生成します。これらの集合のスキームは、それぞれの集合の彩色が、6頂点より小さい 𝔐1 と 𝔐2 の一貫性のある可能な選択 による、さらなる性質をもたなくてはなりません。
(reducible number が1より下げられない理由が書いてあるようなのですが、よくわかりませんでした。)
§4. Regular Maps under the Reductions of §2 and §3.
上記の可約性からどのような地図が導かれるかを問うのは興味深いことです。4か国リング、または1つの国を囲む場合を除く5か国のリングを含まない regular maps M の性質とはなにか?
この質問に答えるため、巡回的に並んだ国々 B1, B2,...., Bk に隣接し境界を接する、任意の k-辺国(k≧5)A について検討します。これらの国々はすべて相異なり、Bi と A が多重接続(multiply-connected region)の場合は正則地図(regular map)の定義により除外されます。同様に、どの Bi も巡回的順序の前後になる場合を除き、 Bj と境界を接することはなく、それ以外は Bi, Bj, A は互いに多重接続していない国々です。結果的に、国々 B1, B2,...., Bk は A の周辺にリングを形成します。
次に検討するのは、C1,...., Cl の国々です。これらは、巡回的な順序であり、それぞれは B1,...., Bk に直接境界を接しており、かつ Bk それぞれが少なくとも5つの境界をもつので l は少なくても k と同じ大きさです。C1,...., Cl のすべての国々は相異なります。そうでなければ、Ci, Bj, A, Bk の4つの国からなるリング、または、Ci, Bj, Bk で形成される多重接続された国があることになります。
もし、2つの国 Ci, Cj が、(C1,...., Cl の巡回的な意味で)隣接していないのに、境界を共有するならば、Ci, Cj, Bk, A, Bl の5か国によるリング、または Ci, Cj, Bk, Bl の4か国によるリング、または多重連結された Ci, Cj, Bk がある。あとの2つの場合は、M に関する仮説で除外されます。1つめの場合では、その5か国のリングは我々の仮説によれば、片側にただ1つの国を含みますが、その国はもちろん B です。Ci, Cj は、B の外側の境界線にそって互いに接しています。ゆえに、1つめの場合は他の2つのように除外されます。
ゆえに、次のように結論します。§2, §3 の簡約化に該当しない正則地図において、地図の任意の国に隣接する国は、A を囲むリング B1, B2,...., Bk(k≧5)を形成し、2番めのリング C1, C2,...., Cl(l≧k)が A, B1, B2,...., Bk を囲みます。逆に、正則地図がこの性質を持てば、4か国のリングはなく、5か国のリングもただ1つの国を囲む場合を除いてありません。
このような地図の簡単な例は、12の5辺国がつくる12面体があります。
§5. Rings and the Four-Color Problem.
前途の reductions と、地図の正規化の応用の後、5か国を超えるリングが可約かどうか、完全に reduce された地図の構造に関するこれまでの結果を拡張する reducing number を持つかどうかを問うのは自然なことです。
例えば、もし6か国のリングが reducing number 3 で可約であったとします。C1, C2,...., Cl の周囲に 巡回的に並んだ3番目の集合 D1,...., Dm (これらのすべての国は相異なります)が reduction に該当しない場合について推測します。*
(foot-note, p. 124) * §4 を参照してください。
しかしながら、明らかに、6か国のリングは断固として、5か国のリングとは違う性格です。事実、私たちの正則地図は、個々の国は3重に続いたリングに囲まれており、しかしながら、それらにおいて、6か国のリングは任意個数の5辺国を含みえます(125ページの fig. 1 を参照してください。それにおいて、点線がリングを示しています)。後で見られますが、もしそのような領域が3つ以上あるなら、6か国リングは可約です。5か国のリングと6か国の間に限るとアナロジーが成り立ち、前に述べた reducing number 1 の役割を 3 が演じることが期待されます。
私が検討したすべての場合において、M1 に3か国以上を含む6か国リングは、M1 に関して可約です。
M1 に十分に多くの国を含む、6か国のリングまたはもっと一般的に n か国のリングが、M1 に関して reducible である必要があるだろうことが、容易に想像できます。事実、すべての可能な 𝔐1 を M1 + R(ここで 𝔐1 の国の数の上限は分かりません)に置き変える選択は、有限の個数の R の彩色の集合(aggregates)をつくります。t1, t2,...., tk を、それぞれ異なる彩色の集合を提供する地図における国の数(M1 + R の国の数)とします。明らかに、t をこれらの数の最大値とし、M1 + R が t 以上の国を含むなら、nか国のリングは M1 に関して可約となるだろう。(どうもよく分からないのですが、リングの中の国の個数を増やしてもリングの彩色の数がそれ以上変わらなくなる上限の国の数があって、それ以上は国の数を増やすことが無意味になる、という意味かと推測します。)
リングによる reduction の重要性は次のように説明されるであろう。任意の地図の直接的で成功する彩色の方法は、1つの国から始めて隣接する国々を彩色することを試すことです。もしkか国のリングが、k は小さい数ですが、地図のどこかで生じることですが、リングの逆側でとても複雑な地図が想定される場合、リングの国の色を決定することが不可能になることが生じます。
6か国のリングの注意深い分析の奇妙な結果の報告によれば、5か国あるいはもっと少ない国のリングになされたように、5か国より多いリングが排除されることはありそうにない、そしてこの事実は、私にもともらしい次の3つの代替案を作らせるように思える。
- 4色で彩色できない地図が存在し、それらのうちで最も単純な地図の主な特徴は、どちらかの側に3か国以上を含む6か国リングの存在かもしれない。reduction の方法は、常にあたえられた地図の彩色か、1つかそれ以上の彩色できない地図かのどちらかに、常に導くであろう。
- すべての地図は4色で彩色可能で、可約なリングの集合が発見され、すべての地図にそのうちの1つが存在する。
- すべての地図は4色で彩色可能で、しかし、任意の個数のリングに囲まれた国々の集合に関する、もっと拡張された reduction による。
§6. Rings of Six Regions.
これまでに行たような、6か国のリングの徹底した分析は試みていないが、しかし、生じたもっと興味深い特別な結果に注意をしぼることにします。
始めるにあたって、次のことを示します、もし M1 が4つの5辺国を含む(fig. 2 原論文参照)ならば、M1 に関して6か国のリングは可約です。
β1, β2, β3, β4 を M1 の5辺国とし、周りに α1, α2, α3, α4, α5, α6 の図に示されたリングが配置されています (6-1)。
我々の証明の方法は、M1 に関して R は可約ではないと仮定して、仮説により必要ない M2 + R のスキームの集合の1つの要素が、 M1 + R の R の彩色に適合するという、矛盾した結果を示すことです。
M1 + R の β1, β2, β3, β4, α3, α5 を合併して 𝔐1 とします (6-2)。この 𝔐1 の選択によって、b, ∗, a, ∗, a, ∗ という M2 + R の R のスキームを得ます。
次の6個が本質的に異なるスキームです。
b, c, a, b, a, c |
b, c, a, c, a, c |
b, c, a, d, a, c |
b, c, a, b, a, d |
b, c, a, c, a, d |
b, c, a, d, a, d |
直接試してみると (6-3 から 6-8)、b, c, a, c, a, c を除く R の彩色のスキームから M1 + R を彩色することが可能で、b, c, a, c, a, c が M2 + R のスキームの集合としてリストされなければなりません。
M1 + R | M2 + R |
---|---|
b, c, a, b, a, c | b, c, a, c, a, c |
b, c, a, d, a, c | |
b, c, a, b, a, d | |
b, c, a, c, a, d | |
b, c, a, d, a, d |
c,d ラインは、b, c, a, c, a, c の cの色の国すべてにつながっているでしょう、そうでなければ、つながっていない c, d の置換で1つのスキームに導かれます(それは b, c, a, d, a, c または b, c, a, c, a, d または b, c, a, d, a, d のどれかです)。したがって任意の a,b の置換が可能で、そのうちの1つから b, c, b ,c, a, c が得られます。それは、M1 + R の R の色の適切な割り当てです (6-9)。
ゆえに、私たちが導いた M2 + R のスキームのすべての場合で、M1 + R の R の彩色に適合するスキームをもちます。それゆに、最初の仮説は正しくありません。
私たちは、次のように結果を一般化できるでしょう。6か国リングの内側にある M1 の国々のすべてが5辺国であり、かつ3つより多くの国があるならば、R は可約です。今見たような種類の配置を含む M1 + R は可約です。これは、内側の5辺国の配置が、fig. 1 に示された単純な性質によるものです。 これは、前途のように R が可約であることを示すのに十分です。
6辺国の周りに6個の5辺国がある M1 ならば (6-10)、M1 に関して6か国リングは可約である ことを直ちに示すことができます。実際、M1 と R の1つおきにとった国を1つの国に合併させ (6-11)、𝔐1 とスキーム、a, ∗, a, ∗, a, ∗ 形成されます。回転の対称性を考慮して、a, b, a, b, a, b; a, b, a, b, a, c; a, b, a, c, a, d; が得られ、これらすべては、M1 + R に適合します (6-12 から 6-14)。
これらは、M1 に3つより多くの国を含む6か国リングの最も簡単な例です。
最初にあげた reduction は、完全に約された地図には、4つの5辺国により囲まれる境界線がない という結果ゆえに興味深い。実際、そのような4つの国は、もし、§2, §3 の reduction がなされた地図ならば、6か国のリングに囲まれる必要がある。p.116 の foot-note によれば、正則地図の5辺国の個数は、7-, 8-, ....辺国の組合せを超え、多様な正則地図で reduction が適用されるのがわかる。
もし、6か国リングが可約ならば、reducing number は3を超える。 これを証明するには、共通のスキームがないスキームの集合Ⅰ,Ⅱ が存在し、9個あるいはもっと少ない国の 𝔐1 と 𝔐2 すべてに対して適合し、どちらかの側のスキームからのすべての置換で他方にあるスキームが導かれることを示す必要がある。
R の彩色は次のようになるかもしれない。
Ⅰ | Ⅱ |
---|---|
a, b, a, b, a, b | a, b, a, c, a, d |
a, b, a, b, a, c | b, a, c, a, c, a |
a, b, a, c, a, b | b, a, c, a, b, a |
a, c, a, b, a, b | b, a, b, a, c, a |
a, b, c, a, c, b | b, a, c, a, d, a |
c, b, a, b, c, a | a, c, b, a, b, d |
c, a, c, b, a, b | b, d, a, c, b, a |
a, b, c, a, d, b | b, a, b, d, a, c |
d, b, a, b, c, a | c, d, a, b, a, b |
c, a, d, b, a, b | d, a, b, a, b, c |
b, c, d, a, b, a | a, b, c, d, a, b |
a, b, a, b, c, d | b, a, b, c, d, a |
a, b, c, a, b, d | a, b, c, d, c, b |
a, d, b, a, c, b | a, c, b, d, c, b |
a, b, c, a, b, c |
スキームのライン(Kempe-Chain)を特定する必要はなく、 Ⅰ,Ⅱ のそれぞれの彩色と、 Ⅰ,Ⅱ それぞれにおいて、§1 の公式の原理によって導かれるすべての組み合わせから推測されるラインのいくつかの配置を、検証すればよい。
ⅠとⅡのこの特性は検証しませんし、9か国より多くない 𝔐1 と 𝔐2 のすべての選択による存在する適切なⅠとⅡの彩色を検証しません。それは、𝔐1 と 𝔐2 はこれまでの reduction の対象とはならないことが仮定され、𝔐1 と 𝔐2 の可能性の集合の限界は38になるでしょう。
§7. Rings of n Regions.
nか国のリングで可約なものを見つけることは可能です。最も簡単な2つの場合を考察します。
地図 M1 + R + M2 の nか国リング R、ここで M1 は1つの国を囲む5辺国のリングで構成され、M1 に関して可約です。α1, ...., αn を巡回的順序で R の nか国とし、β1, ...., βn を M1 の5辺国とし、それらはそれぞれ (α1, α2), (α2, α3), ...., (αn, α1) に境界を接しており、γを M1 の残りの国とします。𝔐1 を形成するにあたって、nが偶数ならば α1, α3, ...., αn-1 を M1 と合併し、nが奇数ならば α1, α3, ...., αn-2 を M1 と合併します。それで、 M2 + R のスキームを得ます。
a, ∗, a, ∗, ...., a, b or a, ∗, a, ...., a, b, c
どちらの場合でも、このような R の彩色で M1 + R を彩色できます。最初の場合(nが偶数の場合)では、もし ∗ がすべて b なら、β1, ...., βn を c か d で彩色してγを a で彩色できます。もしそうでなければ、回転に対する対称性を計算にいれて、次のように仮定できます。
a, c, a, ∗, ...., a, b;
言い換えると、α2 と αn は異なる色と仮定することになります。今、α1 と α2 に隣接する β1 の色を b, β2 は d, β3 は α3, β2, α4 の色と異なる色とする、などとして、βn に届いたならばαn, βn-1, α1 それと β1 の色と異なる色とします。αn と β1 は両方 b となり、それで可能となります。β1, ...., βn が a とは違う色で彩色されたことによって、γを a にできるでしょう。2番目の場合では、以下の同様の方法を使います。最初に、βn を b にします。もし、α2 も b なら、βn-1, ...., β1 と γ を最初の場合のように彩色できます。そうではなくて、α2 は c あるは d、β1 は d あるは c、β2 は b。ここでまた、もし α4 は b ならば、βn-1, ...., β3 を最初の場合のように彩色できます。そうではなくて、α4 は c あるは d、β3 は d あるは c、β4 は b。この方法で、β1, ...., βn を b, c, d で、γを a で彩色できるか、または
c or d, b, c or d, b, ...., b, ∗, ∗, b,
という彩色が現れます。ここで、∗ は c または d で、γは a で彩色できます。
§2, §3 の正則地図の reduction を組合せたとき、 明らかに2番目のリングに囲まれた5辺国のリングに囲まれた任意の n辺国が排除されます。これまでの説明にない最も簡単な例は、n = 7 の場合です (7-1, 7-2)。
地図 M1 + R + M2 の 4nか国リング R、ここで M1 は1つの国を囲む 2n個の6辺国のリングで構成され、M1 に関して可約です。α1, α2, ...., α4n を巡回的順序で R の 国とし、β1, ...., β2n を6辺国、 α1, ...., α4n それぞれ β1, (β1, β2), β2, (β2, β3), ...., (β2n, β1) に隣接しており、γを内側の国とします。𝔐1 を形成するにあたって、α2, α4, ...., α4n を M1 と合併し、R の彩色 ∗, a, ∗, a, ∗, ...., a, を得ます。βの国それぞれは、2つの国 α2i と 1つの ∗国に接しています。もし、すべての ∗国が1つの色 b で彩色されているならば、βi を c と d で交互に彩色でき、n辺国は a または b で彩色できます。この場合でなければ、α1, ...., α4n の彩色として c, a, ...., b, a を仮定して、β1 (b で), β2, ...., β2n, と成功裏に彩色を進めることができ、γのこれまでにしてきたような reduction をすることができます。
簡単な応用は、6辺国のリングに囲まれた6辺国に対するものです (7-3, 7-4)。
だいたいのところは、わかってきたのですが、細かいところでまだわかってないことがあります。
しかし、Birkhoff の方法では抽象化が十分でなく、“すべての組合せ”というような“すべて”というような事を表現するのが難しいようです。それで十分に性質や条件が拾えておらず、証明が難しくなったのではないかと思います。論理的にも“すべて”がそろっていれば、それだけでも特別な性質を持つはずです。
“ブール方程式”を使えば、より抽象的で一般的な表現が可能となり、Hajós の構成法も織り込まれています。それで、いろいろ調べてみると、“これで証明できて当たり前、できなければ、そのほうが驚異的”と思えてしまいます。合理的すぎるんですね。
Birkhoff の方針だと、“これで本当にうまくいくのか?”とはらはらするような面白さがあります。オイラーの公式(v-e+f=2) + Kempe chains + Ring では大国(次数の大きな国)の圧力を分散させる小国(次数の小さな国)の集まる地域があって、4色で彩色可能になるのではないか?という考えも見えてきます。