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具体例での説明


graph1graph2

図1のグラフは、3色で彩色不可能なグラフです。これは、頂点0 と 頂点6 を異なる色で着色すれば、辺e0,6 を付け足すことと同じで、頂点0, 1, 2, 6 が4頂点の完全グラフになります。もし 頂点0 と 頂点6 を同じ色で着色するなら、頂点0 と 頂点6 を同じ頂点とみなすことと同じで、この頂点と 3, 4, 5 が4点の完全グラフになり、3色で彩色できないことがわかります。こうした事柄はブール代数で表現できる性質です。また、どの辺を取り除いても3色で彩色できるようになることが、実際にやってみることで確認できます。

頂点0 に隣接する頂点の集合を H とします( H = {1, 2, 3} )。頂点0 と 頂点0 の辺を取り除いたのが図2です。

着色の条件X, Y を定義します。

色を {α, β, γ} の3色として、条件を満たすすべての着色で、各辺がどうなるかを表にしてみます。辺は両端の頂点の色が等しいとき 1、異なるとき 0 を真理値としてとります。

ただし、色の名を置き換えて同じになる着色は取り除いてあります。白抜きはグラフに含まれない辺です。条件X の着色は122通りあり、1~122行がそれです。そのうちの1~95行が条件Y の着色で、95通りあります。

着色の条件 X, Y による表
123456
No.112123123412345
1α1:α11:α111:α1111:α11111:α
2α1:α11:α111:α1111:α00000:β
3α1:α11:α111:α0000:β11110:α
4α1:α11:α111:α0000:β00001:β
5α1:α11:α111:α0000:β00000:γ
6α1:α11:α000:β1110:α11101:α
7α1:α11:α000:β1110:α00010:β
8α1:α11:α000:β1110:α00000:γ
9α1:α11:α000:β0001:β11100:α
10α1:α11:α000:β0001:β00011:β
11α1:α11:α000:β0001:β00000:γ
12α1:α11:α000:β0000:γ11100:α
13α1:α11:α000:β0000:γ00010:β
14α1:α11:α000:β0000:γ00001:γ
15α1:α00:β110:α1101:α11011:α
16α1:α00:β110:α1101:α00100:β
17α1:α00:β110:α1101:α00000:γ
18α1:α00:β110:α0010:β11010:α
19α1:α00:β110:α0010:β00101:β
20α1:α00:β110:α0010:β00000:γ
21α1:α00:β110:α0000:γ11010:α
22α1:α00:β110:α0000:γ00100:β
23α1:α00:β110:α0000:γ00001:γ
24α1:α00:β001:β1100:α11001:α
25α1:α00:β001:β1100:α00110:β
26α1:α00:β001:β1100:α00000:γ
27α1:α00:β001:β0011:β11000:α
28α1:α00:β001:β0011:β00111:β
29α1:α00:β001:β0011:β00000:γ
30α1:α00:β001:β0000:γ11000:α
31α1:α00:β001:β0000:γ00110:β
32α1:α00:β001:β0000:γ00001:γ
33α1:α00:β000:γ1100:α11001:α
34α1:α00:β000:γ1100:α00100:β
35α1:α00:β000:γ1100:α00010:γ
36α1:α00:β000:γ0010:β11000:α
37α1:α00:β000:γ0010:β00101:β
38α1:α00:β000:γ0010:β00010:γ
39α1:α00:β000:γ0001:γ11000:α
40α1:α00:β000:γ0001:γ00100:β
41α1:α00:β000:γ0001:γ00011:γ
42α0:β10:α101:α1011:α10111:α
43α0:β10:α101:α1011:α01000:β
44α0:β10:α101:α1011:α00000:γ
45α0:β10:α101:α0100:β10110:α
46α0:β10:α101:α0100:β01001:β
47α0:β10:α101:α0100:β00000:γ
48α0:β10:α101:α0000:γ10110:α
49α0:β10:α101:α0000:γ01000:β
50α0:β10:α101:α0000:γ00001:γ
51α0:β10:α010:β1010:α10101:α
52α0:β10:α010:β1010:α01010:β
53α0:β10:α010:β1010:α00000:γ
54α0:β10:α010:β0101:β10100:α
55α0:β10:α010:β0101:β01011:β
56α0:β10:α010:β0101:β00000:γ
57α0:β10:α010:β0000:γ10100:α
58α0:β10:α010:β0000:γ01010:β
59α0:β10:α010:β0000:γ00001:γ
60α0:β10:α000:γ1010:α10101:α
61α0:β10:α000:γ1010:α01000:β
62α0:β10:α000:γ1010:α00010:γ
63α0:β10:α000:γ0100:β10100:α
64α0:β10:α000:γ0100:β01001:β
65α0:β10:α000:γ0100:β00010:γ
66α0:β10:α000:γ0001:γ10100:α
67α0:β10:α000:γ0001:γ01000:β
68α0:β10:α000:γ0001:γ00011:γ
69α0:β01:β100:α1001:α10011:α
70α0:β01:β100:α1001:α01100:β
71α0:β01:β100:α1001:α00000:γ
72α0:β01:β100:α0110:β10010:α
73α0:β01:β100:α0110:β01101:β
74α0:β01:β100:α0110:β00000:γ
75α0:β01:β100:α0000:γ10010:α
76α0:β01:β100:α0000:γ01100:β
77α0:β01:β100:α0000:γ00001:γ
78α0:β01:β011:β1000:α10001:α
79α0:β01:β011:β1000:α01110:β
80α0:β01:β011:β1000:α00000:γ
81α0:β01:β011:β0111:β10000:α
82α0:β01:β011:β0111:β01111:β
83α0:β01:β011:β0111:β00000:γ
84α0:β01:β011:β0000:γ10000:α
85α0:β01:β011:β0000:γ01110:β
86α0:β01:β011:β0000:γ00001:γ
87α0:β01:β000:γ1000:α10001:α
88α0:β01:β000:γ1000:α01100:β
89α0:β01:β000:γ1000:α00010:γ
90α0:β01:β000:γ0110:β10000:α
91α0:β01:β000:γ0110:β01101:β
92α0:β01:β000:γ0110:β00010:γ
93α0:β01:β000:γ0001:γ10000:α
94α0:β01:β000:γ0001:γ01100:β
95α0:β01:β000:γ0001:γ00011:γ
96α0:β00:γ100:α1001:α10011:α
97α0:β00:γ100:α1001:α01000:β
98α0:β00:γ100:α1001:α00100:γ
99α0:β00:γ100:α0100:β10010:α
100α0:β00:γ100:α0100:β01001:β
101α0:β00:γ100:α0100:β00100:γ
102α0:β00:γ100:α0010:γ10010:α
103α0:β00:γ100:α0010:γ01000:β
104α0:β00:γ100:α0010:γ00101:γ
105α0:β00:γ010:β1000:α10001:α
106α0:β00:γ010:β1000:α01010:β
107α0:β00:γ010:β1000:α00100:γ
108α0:β00:γ010:β0101:β10000:α
109α0:β00:γ010:β0101:β01011:β
110α0:β00:γ010:β0101:β00100:γ
111α0:β00:γ010:β0010:γ10000:α
112α0:β00:γ010:β0010:γ01010:β
113α0:β00:γ010:β0010:γ00101:γ
114α0:β00:γ001:γ1000:α10001:α
115α0:β00:γ001:γ1000:α01000:β
116α0:β00:γ001:γ1000:α00110:γ
117α0:β00:γ001:γ0100:β10000:α
118α0:β00:γ001:γ0100:β01001:β
119α0:β00:γ001:γ0100:β00110:γ
120α0:β00:γ001:γ0011:γ10000:α
121α0:β00:γ001:γ0011:γ01000:β
122α0:β00:γ001:γ0011:γ00111:γ

1 を ex,y に、0 を ¬ex,y に置換え、同一行内で論理積をつくると最小項になります。それらの論理和が、加法標準展開です。

No.1 から最後の 122 までから作ったのが K4∧R 、No.1 から 95 で作ったのが k∧K4∧R です。通常、K4 は4点の完全グラフを表しますが、ここでは4点の完全グラフから作られる論理式です。k は同様に3点の完全グラフから作られる論理式です。R も論理式です。

白抜きした辺を無視した No.1 から 122 までが Σ(K4∧R) 、No.1 から 95 までが Σ(k∧K4∧R) です。このように Σ はグラフに含まれていない辺を無視する操作を表しています。

白抜きした辺を無視した上で、No.96 から 122 までの最小項で、No.1 から 95 までに含まれていないものを探したのが次の表です。

着色の条件 X, Y の差分の表
123456
No.112123123412345
101α0:β00:γ100:α0100:β00100:γ
107α0:β00:γ010:β1000:α00100:γ
104α0:β00:γ100:α0010:γ00101:γ
113α0:β00:γ010:β0010:γ00101:γ
116α0:β00:γ001:γ1000:α00110:γ
119α0:β00:γ001:γ0100:β00110:γ
122α0:β00:γ001:γ0011:γ00111:γ

No.101,107 はグラフのすべての辺を 0 にするものです。No.104, 113, 116, 119, 122 には 1 になっている辺があります。No.101 と 107、No.104 と 113、No.116 と 119、はそれぞれ同じ最少項になります。これらの最小項の論理否定をとり、最大項をつくります。

No.101 より g   ⇔ ( e1,2 ∨  e3,4 ∨  e3,5 ∨  e4,5 ∨  e1,6 ∨  e2,6 ∨  e4,6 ∨  e5,6 )

No.104 より g1 ⇔ ( e1,2 ∨  e3,4 ∨ ¬e3,5 ∨  e4,5 ∨  e1,6 ∨  e2,6 ∨  e4,6 ∨ ¬e5,6 )

No.116 より g2 ⇔ ( e1,2 ∨ ¬e3,4 ∨  e3,5 ∨  e4,5 ∨  e1,6 ∨  e2,6 ∨ ¬e4,6 ∨  e5,6 )

No.122 より g3 ⇔ ( e1,2 ∨ ¬e3,4 ∨ ¬e3,5 ∨ ¬e4,5 ∨  e1,6 ∨  e2,6 ∨ ¬e4,6 ∨ ¬e5,6 )

そうすると次の恒真式が成立します。

 tautology Σ(k∧K4∧R) ⇔ g∧g1∧g2∧g3∧Σ(K4∧R)

次の形で表すこともできます。

 tautology { Σ(k∧K4∧R) ∨ ¬Σ(K4∧R) } ⇔ g∧g1∧g2∧g3

g1 を取り上げます。

 tautology Σ(k∧K4∧R) → g1

詳しく書きます。

 tautology Σ(k∧K4∧R) → ( e1,2 ∨ e3,4 ∨ ¬e3,5 ∨ e4,5 ∨ e1,6 ∨ e2,6 ∨ e4,6 ∨ ¬e5,6 )

g1 では、e3,5 と e5,6 に論理否定が付いています。そこで、この2辺を縮約したグラフを考えます。その辺を“移項”することができます。

 tautology e3,5∧e5,6∧Σ(k∧K4∧R) → ( e1,2 ∨ e3,4 ∨ e4,5 ∨ e1,6 ∨ e2,6 ∨ e4,6 )

さらに Σ の中に入れることができます。

 tautology Σ(e3,5∧e5,6∧k∧K4∧R) → ( e1,2 ∨ e3,4 ∨ e4,5 ∨ e1,6 ∨ e2,6 ∨ e4,6 )

e3,5 と e5,6 を縮約したグラフは、条件X で彩色できて、条件Y では彩色できません。ただし、合併する頂点の中に集合H の頂点があるときのみ、合併してできた頂頂点を集合H の頂点とします。多重辺が生じても自動的に同一の辺として扱われます。ループが生じることはありません。なぜなら、その場合は条件X でも彩色できないから仮定に反します。

g2, g3 も同様です。

完全グラフでないとき、どの辺にも論理否定のつかない g のような最大項があれば、g1, g2, g3 のようなどれかの辺に論理否定のついた最大項が生じることを証明すれば、Hadwiger予想を証明したことになります。

四色問題についても K5∧R の表の性質とみなすことが出来ます。その性質を表現するにはブール代数が有効です。


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